西 泉

研究活動

 僕は、ノーム・チョムスキーという言語学者の追っかけ始めることで言語の研究に興味を持った。彼に出逢ったのは高校3年のときだった。ある雑誌に彼の言語に対する見解が紹介されていたのである。

 なぜそんなに彼に魅かれたのか?チョムスキーは、言語を社会から切り離し、人間の言語はヒトという生物が持つ種固有の生物学的プロダクト(産出物)であると言い切っていた。こんなに大胆なことを言ったのは、知の歴史上、彼が最初の人だろう。それまでは、言語を人間社会との関係で論じることが多かった。20世紀の言語論的転回を導いたソシュールもその例外ではない。でも、チョムスキーの書いたものを読むと、逆に、どうして言語を生物学的に扱わなかったのか不思議になる。チョムスキーの考え方を推し進めれば、言語学が自然科学にどんどん近づいてくる。

 類人猿に記号操作を教え込ませ、それによってチンパンジーも言語を使う能力があるという議論に対し、チョムスキーはきっぱりと「チンパンジーはもともと言語を使う能力があるが人間ほどうまく話せないだけであるという説は、人間はもともと空を飛ぶ能力があるが鳥ほどうまく飛べないだけである、というのと同じである」と述べている[酒井邦嘉 著『言語の脳科学』 p. 36]。

 チョムスキーに対する思いは昂じて、1994年から95年にかけ、チョムスキーの居るマサチューセッツ工科大学 (MIT) に一年間滞在した。秋学期の木曜日に開かれる言語学の講義は、ニューイングランド全域から、さらにカナダから、車を走らせて聴きにくる学生や言語学者で賑わう。春学期は科学哲学の講義に変わる。ノーベル賞を受賞した物理学者や生物学者がいつでも聴きに来れる環境で、科学哲学を論じるのは勇気のいることであろう。MITで過ごした時間はあらゆる意味で思い出深く、幸せな一年であった。

 アメリカ合衆国に居る、ある言語学者の「追っかけ」から始まった僕の研究生活は、今もぶれることなく続いている。換言すれば、僕の研究なんて今でもチョムスキーを追っかけているに過ぎないのではないか、なんて思うとほんのすこしだけさびしくならぬわけではない。

教育活動

 専門科目の「言語学」と「英語音声学」では、両分野の基礎をふまえながら、「言語学は自然科学の一分野である」という上記のテーゼも学生たちに伝え、自然科学的思考法のトレーニングもかねられるようにつとめている。

 英語を教える語学科目は、第2言語、即ち母語以外の言語でものごとを考えることや読むこと、さらにしゃべることが僕自身嫌いでないので、どうすればこの「悦び」を学生に伝えられるか、常に考えながら授業を展開している。学生が英語に対する悦びを自らのものにするには、一時間でも一分でも多く英語に接することが前提条件となる。なぜなら、彼女/彼らが思っているほどには、中学一年から大学に入るまで学生たちは英語に接していないからである。そのために、いくつもの仕掛けを作りながら授業を進める日々である。

所属学会

GLOW (Generative Grammar in the Old World) 日本言語学会 沖縄外国文学会

学外活動

生成文法研究者数人と始めた研究/読書会は四半世紀あまり続いている。

著作・論文

「ウチナー若者ことばにあらわれるじらーについて」2004  Southern Review 仲間雅子との共著

「英語音声学の射程ーー気音を中心に」2013 『沖縄大学人文学部紀要』

「再帰性について」2014 (準備中)

氏名: 
西 泉
氏名アルファベット: 
NISHI Izumi
写真: 
主な担当科目等: 
言語学、言語理論
専攻: 
言語学、言語理論
最終学歴: 
国際基督教大学博士課程
学位: 
教育学修士 国際基督教大学 (ICU) 博士後期課程言語学専攻
生年等: 
1956年