大嶺 哲雄
主な研究活動とその概要
主として琉球列島の自然環境の基礎的解明。生物科学系―分類学、生物地理学、動物生態系における土壌動物群を対象。特に節足動物門多足類(ゲジ目、ムカデ目、ヤスデ目)と菌類―冬虫夏草属に関する種の多様性およびその地理的分布、拡散、絶滅等のメカニズムの解明を目的とする。研究活動としては、通常の自主的フィールドワークの他に、学外との共同研究と合同調査として、①「琉球列島の自然とその保護に関する基礎研究シリーズ(琉球大学―’73年~’75年)、②第二次調査’88~‘89年に従事(文部省科研対象)。③米国ハワイ大学―資源および島嶼性環境研究調査(米国国務省)’94~’96年―合同調査に従事。その他に④沖縄県環境保健部―自然保護課-による絶滅危惧種の調査や⑤西表島の冬虫夏草探査(日本冬虫夏草の会主催)などに従事。
活動期間:1958年―2003年までの55年間。おもな島嶼:奄美諸島、トカラ諸島、沖縄本島と硫黄鳥島を含む各諸島、宮古島諸島 八重山諸島(特に西表島を中心)、南・北大東島など。
活動目的
南西諸島の多足類相の特性とその解明。 科学研究助成金(文部省)
琉球列島の土壌動物と森林環境への影響(森林保護の立場から)調査。(米国ハワイ大学共同研究助成)
琉球列島の子のう菌(冬虫夏草属)種分化および分布の調査。
琉球列島の絶滅危惧種および帰化動物の侵入経路の調査。など
活動成果と課題
南西諸島の多足類90種、琉球列島の冬虫夏草属40種(1998年現在)記録確認。
これまで南方系動物植物の北上はアジア・東南アジア経路を主流とされていたが、多即類では新たにインド・オーストラリアおよび小笠原諸島の経路を突き止めた。
南西諸島は多足類の分布上、東アジアにおける南北種の混成地域として、また、日本本土への生物移動の侵入経路として小笠原諸島とともに重要な地位にあることを確認、指摘したい。
般的に冬虫夏草は、本来中国の標高3000メートルの山岳地帯か温帯地域の森林を生息域とした。従来、日本本土では冬虫夏草属群は温帯各地で発見される種族とされていた、1970年代清水大典(初代日本冬虫夏草の会会長)等が西表島の冬虫夏草類20種を記載報告されて以来、亜熱帯地域での生息が確認された、’90年以降、筆者は日本冬虫夏草の会の調査と共に亜熱帯性虫草の生態や種類を追加発見し南西諸島の冬虫夏草分布の解明に貢献。
学外活動(過去5ケ年間)
日本冬虫夏草の会 名誉会長 2007年 ~現在
学校法人尚学学園 理事 1993年 ~現在
主な著書および論文
- 1.日本の「植生地図および商用動物地図」シリーズ―沖縄編(47)共著1976年(昭和51年―文化庁)
- 2.「琉球列島の動物分布特性と依存種群」 生物科学総合雑誌 1985年―遺伝―41巻7号、41巻8号(裳華房)
- 3. 戦後沖縄の社会変動と家庭問題 共著 「琉球列島の自然環境」1990年(平成元年) (アテネ書房)
- 4. ユネスコ・世界自然遺産リストへの推薦論文「琉球列島の自然」1994年(平成4年)(国際教育 日本センター)
- 5.「西表産 冬虫夏草」1996年(平成6年) 沖縄大学地域研究所年報
- 6. 「沖縄県の絶滅種の恐れのある野生生物」1996年(平成6年)沖縄県環境保健部自然保護課―(レッドブックデーター沖縄) 多足類、菌類の部
- 7. 沖縄県史―資料13「硫黄鳥島の土壌小動物および多足類」2002年(平成14年) 沖縄県教育委員会
- 8.「琉球弧の成立と生物渡来」共著―「琉球弧の多足類分布特性」 木村正明編著 2003年(平成15年)沖縄タイムス社刊
