ANDOGネットワーク特別講演会 「食と依存」&「食が沖縄を救う 研究の先にあるもの」

ANDOGネットワーク特別講演会 「食と依存」&「食が沖縄を救う 研究の先にあるもの」

2017.01.31

食や栄養をテーマに、ANDOGネットワーク特別講演会が1月17日(火)に同窓会館で開催されました。

ANDOGネットワークは、同窓会館で月1回第三火曜日に依存症援助職の研究会(ANDOG研究会)を開催しており、今回は広く市民に公開した講座となりました。

 

 

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「食と依存」

又吉 哲太郎 氏(琉球大学医学部附属病院医師キャリアセンター助教)

 

前半の講演「食と依存」では、糖分、脂肪、塩分など依存性のある食事が肥満や高血圧などの健康問題に影響する反面、食物繊維が豊富な依存性のない食事が沖縄の長寿を支えてきたのではないかという研究が紹介されました。「食と依存」の関係が大変わかりやすいお話しでした。

また、貧困化が問われる沖縄で、価格の高い野菜を日常的に食べていくにはどうすればよいのかと課題が提起されました。

 

<講演の概要>

 

かつて長寿県と言われた沖縄県。近年県民の糖分や動物性脂肪の摂取量は多く、肥満が進んでいる。健康の問題は、県民所得など社会的因子と結びついている。

カロリー制限はみんな知っているが、なかなかできない。なぜか。そこに、摂食行動の依存的側面が問われることになる。

どのような食品に依存性(刺激行動の誘発)があるのか。

ジャンクフードは食べやすいようにいろんな加工がされ、いろんなものが含まれている。コカ・コーラで6種類。チョコレートアイスコーンで22種類。マクドナルドのフレンチフライで9種類。スターバックスのチョコレートクランチフラペチーノは1000㎉を超えるが、いろんなものが入って口当たりがよくなっている。宣伝では、「ビターテイストで大人向け、ごくごく飲んでも甘ったるくない」というようなことが謳われているが、実はラーメン2杯分のカロリーがある。

     

 

ご飯の好きな人は多いが、白いご飯そのものが好きというよりも、おかずと合わせて食べるのが好きということだろう。安いお弁当は、濃い味付けをしてご飯を多めにするということになる。

依存症とは「精神に作用する化学物質の摂取やある種の高揚感を伴う特定の行為を繰り返し行った結果、それらの刺激を求める抑えがたい欲求である渇望が生じて、その刺激を追い求めることが優位になり、その刺激がないと不快な精神的、身体的、行動的な状態」と定義されている。これはアルコールやたばこでなくても、食事においても言えることである。

 

塩味で依存が生じるだろうか。

塩辛いおかずをご飯と食べると塩味がちょうどよい塩梅になる。これで快感が得られる。この場合、ご飯は塩味を薄める役割になる。それがなぜかご飯が好きと思うようになる。なぜか。ある行動の結果、快感がもたらされればその行動が好きになるという法則があるからだ。塩辛いおかずを口に入れると、ご飯を食べてちょうどいい塩梅にする。そうして快感が得られる。このときの直前の行動は、ご飯を口に入れるということだ。すなわちご飯を口に入れるという行動が好きになる。

 

 

食事と空腹感の関係もある。

血糖値の上がりにくい食品のほうが空腹を感じにくいというデータがある。なぜか。血糖値が上がりやすい食品を食べるとインスリンが大量に出て、食後2時間くらいで血糖値が下がり過ぎてしまう。血糖値が下がるとお腹が空く。血糖値が下がる前からインスリンが多く出ると、空腹感が強くなるという相関関係もある。

食物繊維の多い食品は、食べるのがゆっくりになると言われている。例えば減量したいときはゆっくり食べるとよいという話をよく聞く。しかし、早食いの人の多くはあまり噛まずに飲み込める食事が好きだという傾向があるのではないか。

 

 

1940年代、沖縄県民のエネルギー摂取はサツマイモで60%近くあったというデータがある。当時のサツマイモは今のものよりカロリーが低く、例えば一日に2,500㎉必要な男性だとサツマイモを2~3㎏食べなければならない。おばあさんが「かめー、かめー」というのは、そういう経験があったのかもしれない。もっとたくさん食べないと、この子はやせ細ってしまうと本気で思っているかもしれない。

 

サツマイモのような繊維の多い食品は食べるのに時間がかかるので、なかなか刺激行動になりにくい。刺激行動は、快感が得られるとその行動が好きになるということだが、快感が得られるまでの時間が短いほど強力な因子になる。だから、あまり噛まずに飲み込める美味しい食品のほうが好んで摂取する対象になりやすい。

 

かつて沖縄では野菜の摂取が多かった。逆に言えば、他の食品があまりなかった。しかし今、野菜の価格が高く、なかなか買えない。特に収入の低い世帯は日常的に食べられない。このような状況にどう対策をしていくのか、今後の沖縄の課題になる。

 

 

 

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「食が沖縄を救う 研究の先にあるもの」

等々力 英美  氏(琉球大学地域連携推進機構客員准教授)

 

後半の講演「食が沖縄を救う~研究の先にあるもの」では、「チャンプルースタディ」と銘打って10年以上継続されている伝統的沖縄野菜による介入研究をベースに、沖縄の長寿再生に向けた戦略の考え方について紹介されました。パワーポイントでおよそ90枚の資料を提示しながら、詳細なお話が展開されました。

 

<講演の概要>

 

1.沖縄の栄養転換(沖縄の社会経済的要因による食への影響)

かつて沖縄の長寿を支えていた沖縄伝統食。戦後は米国からの脂質文化、復帰後は本土からの食塩文化がもたらされ、2つの食文化のマイナス面を2重に受けた結果、「330ショック」(沖縄県民の平均寿命が2010年に女性で全国3位に、男性で全国30位に転落)といわれる状況に陥った。沖縄では40歳代を境に食習慣に顕著な年齢差があることもわかった。

米国は米国式食習慣から沖縄食の取入れへ、沖縄は沖縄伝統食から米国式食習慣の取入れへと「沖縄の食のパラドックス」が起きている。

 

 

2.チャンプルースタディ(伝統的沖縄野菜による介入研究)

2005 年より、沖縄の伝統的な食事を現代風のメニューにして、実際食べていただくことによって健康に効果が出るかという介入研究(疫学研究)を沖縄、首都圏、米国で行っている。伝統的沖縄食パターンは、緑黄色野菜・甘藷・大豆加工食品・鰹節・昆布が多く、食塩・乳製品が少ない。アメリカの研究結果で推奨されている「DASHダイエット」という降圧効果のある食事療法があるが、そのDASH食品と類似している。

研究の結果、「沖縄野菜を豊富に取り入れた伝統的沖縄型食事パターン介入が、血圧予防に有効であるけ農政が示唆された」「欧米型食事を基礎にして作られたDASH色とは異なる伝統的沖縄型食事が、DASH食と同様の効果を示した」という結論が得られた。また、「4割程度の部分的介入にもかかわらず一定の降圧効果が見出された。健康意識が向上した可能性がある」「日常生活において実践可能な強制力の強くない食事指導で降圧の可能性がある」「日本人、米国人ともにDASH食と同程度の降圧効果が示された」という結論が得られた。

沖縄の伝統的な食事が健康に効果ありというエビデンスが得られたわけだが、次にそれをどう取り入れるのかという行動変容が課題となる。人の行動を変えるのは難しい。そこで家族機能に注目し、親子の対話が食事摂取行動に影響するという仮説を立て、現在研究を進めている。

 

 

3.食育介入研究(八重瀬町食育スタディから行動変容研究へ)

「野菜が好きになる」「減塩食にする」という食事の行動を変えるにはどうすればよいのか、八重瀬町食育スタディという食育介入研究を行った。これは、親世代への食行動変容は子どもからの働きかけが有効ではないかということで、学校給食や食育を活かす取り組みである。

食育授業では、「①野菜たっぷり・減塩献立の実施」「②栄養素と健康・疾病アプローチによる食育授業」「③家庭と連携した栄養知識の強化」の3つの介入効果の検証を行い、その結果、児童・保育者間のコミュニケーションの豊富さは、児童の栄養知識レベル・野菜摂取量と関連すること、また、児童・保護者の栄養知識レベルは、家族機能と関連するということが見えてきた。つまり、正しい栄養知識レベルと家族コミュニケーションの醸成は、野菜摂取の向上につながるのではないかということである。このことから、家庭においても親子間対話を通じた正確な栄養知識を伝える必要があること、そして従来の食育に不足していることを把握し食育授業の内容を改善する必要があるとして、格差の是正は学校でこそ行えることを活かして、家庭・学校・地域の絆を介した健康教育の取組が必要であるという結論に至った。

 

 

4.今後の課題(那覇市食育スタディ(仮))

このような基礎研究を通して、昨年八重瀬町では町長の施政方針演説でも食育スタディを取り上げていただき、食育スタディ推進委員会が設置され、実際に動き出している。10年ほどかかったが、地域と大学がwin-winの関係で、地域の方々に支えていただきながら大学の研究が地域の役に立ってきたと思う。

今後の展開として、今年の4月から「那覇市食育スタディ」という那覇市での大規模な研究を予定している。都市地域まで対象を広げて、沖縄の長寿を再生させるための研究を行っていく。

(了)

(文責:経営企画室)