'98年11月13日、ジュゴン「乳児」が刺網に混獲され死体で発見された。LOVE ジュゴン・ネットワークは、沖縄県&日本政府関係機関(者)などに対する、次掲の「ジュゴン保護のために(緊急要請)」と題した緊急要請文を準備し、沖縄県庁関係部局に対しては、緊急要請文日付(11月25日)の同日、要請行動を行った。(その要請行動は、沖縄タイムス&琉球新報は翌日26日(木)朝刊、NHK(沖縄支局)は翌々日の27日(金)、ローカルニュースで報道された。とくに、NHK報道は、沖縄県庁や漁協関係者の取材報道もあり、沖縄県関係部局や漁協関係者の姿勢の一端がうかがえるものとしても注目される。)

次掲「ジュゴン保護のために(緊急要請)」PDFファイル形式

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1998年11月25日(水)

            殿

LOVE ジュゴン・ネットワーク     

代表世話人 棚 原 盛 秀

    謝名元 慶 福

ジュゴン保護のために(緊急要請)

 私たちは先月10月24日、「ジュゴン3頭の撮影に成功」「親子の可能性」という報道に接し(10/24琉球新報、10/25沖縄タイムス等)、改めて、ジュゴンの棲息環境がなお維持されているのだと、素直に喜んだ。

 そして、私たちは11月4日、第4回ジュゴン公開講座を開催し(名護市久志支所ホール)、ジュゴン生態・棲息環境学習とジュゴン保護の訴えのため、ジュゴン研究者であるヘレン・マーシュ教授(ジェームズ・クック大学/オーストラリア) と海棲哺乳類研究者の粕谷俊雄教授(三重大学 )、両学者による講演と「辺野古と嘉陽沖のジュゴン映像」(冒頭のジュゴン3頭など)の放映を行った。ところが、その直後、冒頭の報道からも一ヵ月もたたない今月11月13日、悲報が伝えられた。

 ジュゴン1頭が、金武湾(沖縄本島中部東海岸)で、刺網に混獲され死体で発見されたのである。体長110B、体重31.7L、オス、誕生から1カ月以内と思われる乳児で、直接の死因は溺死(窒息死)と思われる。今回混獲されたジュゴンが乳児で、それも、死体で発見されたことは、改めて、沖縄本島東海域がジュゴンの繁殖・棲息海域であることを裏付けるとともに、ジュゴンの生態調査を含む棲息環境調査、並びに、漁具による混獲回避などの緊急措置の必要性を強く求めている。

 私たちLOVEジュゴン・ネットワークはこれまでも、ジュゴン保護を訴え、海上ヘリ基地計画に伴うジュゴン棲息海域の環境破壊によるジュゴン絶滅の危険性とともに、沖縄本島東海岸海域における漁具によるジュゴン混獲(死亡)の危惧を表明してきた。それまでに、公表されたジュゴン漂着・混獲などストランディング記録だけでも、漁具(刺網や定置網)によるジュゴン混獲ケースは、1990年代だけで7ケース(ほぼ1年に1回の混獲となる)、そのうち、刺網が1ケース(生体)で、残りは定置網(生体4、死体2)であったからである(添付文書「ジュゴン・ストランディング記録」)。

 そこで、私たちは、沖縄海区漁業調整委員会主催による公聴会に際して、本年4月30日(名護)と5月1日(那覇)、沖縄海区調整委員ほか関係機関(者)に対し、「ジュゴンが混獲されないような方策」など5項目にわたる要望を行った(添付文書「発言要旨」参照)。

 また、私たちは、沖縄県に対し「ジュゴン保護と生態系保全のための要請」(1998年1月26日、LOVEジュゴン・ネットワーク第3回公開講座一同)、あるいは、国内外の自然保護団体に対し「ジュゴンとその生態系の調査と保護、そして世界平和のためのメッセージ」発信などを行う一方、私たち自身も、WWFJ(世界自然保護基金日本委員会)からの助成金などを得て、ジュゴン目視情報収集活動(1998年1月から10月までの間に51件の目視情報を収集し、記録した。添付文書「1998年ジュゴン目視記録」参照)、沖縄本島北部東海岸におけるパラグライダーなどによるジュゴン個体識別調査や、藻場(ジュゴンの餌場)調査などを行ってきている。

 また、日本自然保護協会(NACS-J) の助成を得たジュゴン研究会(粕谷三重大教授代表)による「航空機によるジュゴン調査」や藻場調査も実施されてはいる。しかし、ジュゴンの本格的調査さえ未だに実現されておらず(たとえば、先島周辺海域については一切行われていない)、ましてや、ジュゴン保護施策の検討もなされていないのが現状である。そこで、ジュゴンの本格的調査や保護施策の検討と実施が強く求められているが、その際、政府関係部局(職員)や、沖縄県など自治体関係部局(職員)、大学や水族館など研究機関(研究者)、そして、私たちのような市民グループなど、関係機関(者)相互間の連携、あるいは、一体となっての取り組みが不可欠である。

 ジュゴンは戦前から国指定天然記念物として指定されてきた(復帰前は1955年1月25日、琉球政府指定天然記念物)。とくに、その関係政府・自治体部局(職員)は、この間、いかなる動きを示したのだろうか。もし、何らの取り組みがないのであれば、文化財保護法の趣旨にも反するものと言わざるを得ない。

 生物の多様性、種の保存が、私たち人間、人類にとってもいかなる意義をもつものなのか、改めて思いを致す必要性があるのではないだろうか。私たちの世代が、ジュゴン棲息の北限海域といわれる沖縄本島などの海域に棲息するジュゴンを絶滅させてはならない。

 私たちの生活とジュゴンとの共生は可能のはずである。ジュゴンは極端な偏食で、ジュゴンの餌はもっぱら海草といわれる。そのようなジュゴンが、その好物のある藻場には、人間の活動時間帯である昼間は避け、夜間に近づくようだ。ジュゴンの方は、そのような棲み分けを心がけているのに、人間の側が無策では、片手落ちといわざるをえないではないか。

 前述のとおり、同じような漁具(定置網)に混獲されても、「生体」発見4ケース、「死体」発見2、刺網でも、1990年嘉陽のは生体で発見されたのに、今回の金武湾のは死体だった(ちなみに、嘉陽のも体長117B、体重39Lで乳児だったと思われる)(添付文書「ジュゴン・ストランディング記録」参照)。そのような混獲ケースの再調査をはじめジュゴンの生態、棲息環境が把握されれば、漁具そのものや設置場所の改善方策についても見えてくるはずである。

 今後、仮に、適切なジュゴン調査や保護措置の取り組みがなされないまま事態が推移し、再び、今回のようなジュゴン混獲による死体発見「事故」が発生した場合、関係行政部局(行政職員)の道義的責任が生ずるのではないだろうか。

 そこで、私たちLOVE ジュゴンネットワークは、緊急の要請事項として、下記の二つの事項を要請する。

1 ジュゴン棲息調査とジュゴン保護措置要請

 ジュゴン棲息調査と、ジュゴン保護措置の検討と実施のため、文化庁、環境庁、水産庁、沖縄県や関係市町村などの自治体、水族館、大学や研究機関、そして、私たちLOVE ジュゴン・ネットワークなど関係自然保護団体や関係住民らが連携できるネットワークを実現するための準備に直ちに入っていただきたいこと

2 ジュゴン保護のため水産関係機関との協議の場の設定要請

 私たちが、沖縄海区漁業調整委員会主催による公聴会に際し、沖縄海区調整委員ほか関係機関(者)に対して要望した5項目(添付文書「発言要旨」参照)実現のため、可能なかぎりすみやかに、とくに、水産関係行政機関(職員)や漁協・関係者と私たちLOVE ジュゴン・ネットワークとの、何らかの形での協議の場を設定していただいた上で、私たちLOVE ジュゴン・ネットワークとともに、ジュゴン保護のための適切な具体的措置を検討し、実施していただきたいこと

 LOVE ジュゴン・ネットワーク連絡先:郵便番号901-2223宜野湾市大山5-3-9

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Tel:098-897-2234 FAX:098-897-2240


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