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在学生の声(大学院)

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在学生

新田和馬【2022年度入学】

1.沖縄大学大学院への進学を決めた理由について
沖縄大学大学院への進学を決めたきっかけは、学部時代の講義や研究を通して、沖縄に対するイメージが一変したことでした。私はこれまで沖縄で生まれ育ちましたが、今まで教わってきた沖縄関連の学習は、沖縄戦やアメリカ世等の「苦難の歴史」が多く、「うちなーんちゅ」でありながら、沖縄に対して「本土よりも貧しくて劣った地域」という漠然とした印象を抱いていました。しかし、沖縄大学で琉球史関係の講義を受講する中で、かつて私たちの先祖が「琉球王国」という国家を自ら形成・運営し、大交易時代を築き、小国ながら世界を動かしていた歴史的事実を知り驚かされました。この「主体的な沖縄」を知らないまま、沖縄の負の側面のみを認識したままでよいのだろうかという疑問を抱いたことが、本格的に琉球史研究を志した動機です。学部2年次の時には、教職を履修しながら「琉球弧研究支援」制度を活用して研究を開始しました。研究内容は、士(さむれー)と呼ばれる琉球王国の士族階級の者たちが所有していた「琉球家譜」という系図を調べ、自分のルーツをたどっていくというものです。その中でたどり着いたのが「泊村」という地域でした。泊村は、現在の那覇市にある泊と前島を合わせた地域で、かつては首里三平等・那覇四町・久米村とともに琉球王国の町方(都市部)の一部でしたが、泊村は他地域に比べてあまり注目されていませんでした。琉球王国において泊村がどのような役割を有していたのかを解明できれば、従来培われてきた琉球史研究に新たな視点が生まれるのではないかと思い、本学の大学院に進学することを決めました。

2.研究テーマについて教えてください
私の研究テーマは「琉球王国における泊村の歴史的役割について」です。このテーマを研究することになったきっかけは、学部2年次の琉球弧研究支援で行った「琉球家譜–王家からの下賜品を中心に–」という共同研究でした。この研究では、メンバーそれぞれが自分の先祖の家譜を解読し、尚家から拝領した物品に差異があるのかを調べる、というものでした。それがきっかけとなり、次第に家譜記録から自身の先祖を詳しく調べるようになったのです。その中で初めて知ったのが「呉弘肇泊里主宗重(ごこうちょうとまりさとぬしそうじゅう)」という人物でした。宗重は私の門中(呉氏)の始祖であり、尚徳王が喜界島の遠征から帰ってきた際に初代泊地頭に任命され、泊村と大きく関わっていた人物でした。自身の門中の祖先が泊村に大きく関与しているにもかかわらず、泊村のことを何も知らない自分にショックを受け、次第に泊村や泊村の士(泊士)の研究をするようになっていきました。ちょうど学部2年次の時に漢文で書かれた家譜資料を読んでいたこともあり、3年次には「琉球家譜からみる近世泊士の位階と昇進について」という研究で、『那覇市史資料篇1巻8 家譜資料四』の中の泊士たちの家譜を読み解き、彼らの位階を調査しました。4年次には、この研究をさらに発展させる形で「近世琉球における泊士の位置付けに関する一考察−「泊系家譜」を中心に−」を執筆し、先行研究で「泊士が町方の中で最も出世から遠い」とされてきたことに対して、家譜記録の中から筋目・位階・役職などをもとに検証しました。
このように、私はこれまで学部での研究を通して泊士を調査してきましたが、論文の中で泊士について述べる上で明らかに欠けている部分があると常々感じていました。それは、泊村の通史的な歴史が解き明かされておらず、概要を把握できていないことです。泊士を調査するには、当然のことながら泊村の歴史全体を把握している必要がありますが、管見の限りこれまで泊村を総体的に論じた論文は見つかっておらず、参考文献も断片的なものが多い状況です。こうした研究状況を踏まえると、泊村は首里三平等・那覇四町・久米村とともに町方の一地域であるにもかかわらず、なおざりにされてきたきらいがあります。換言すると、泊村の歴史を調査することは、従来の琉球史研究に一石を投じることになると言えます。
このような経緯から、泊村の歴史を研究するため、現在はさらなる参考文献や史料の収集に取り組み、琉球王国において泊村がどのような役割を有していたのかを調査しています。これまでの研究によって、近世琉球(1609〜1879)の泊村は、国外から漂流してきた漂着民や外国人を収容する役割を有していたことが明らかにされていますが、それ以前の古琉球時代の泊村がどのような変遷をたどり、どのような役割を有していたのかは明確にされていません。しかし、古琉球時代の泊村には、奄美群島などの島々からの貢物を管理する「大島蔵」と「泊御殿」と呼ばれる施設が存在しており、近世琉球の泊村とは異なる役割を有していたことがわかります。修士課程の2年間を通して、古琉球時代から近世琉球までの泊村の変遷をたどり、泊村が有していた役割を解き明かしていきたいと考えています。

3.修了後はどのような進路を希望されていますか
修了後の進路は未定で、進学か就職かで迷っています。前者の場合であれば博士課程に進学し、現在の研究をより深化させたいと考えています。後者の場合であれば、本学大学院で取得できる中学社会科・高校地理歴史科の専修免許状を生かし、沖縄県で教師になりたいと考えています。いずれにしても、修士課程で学んだ琉球史の知識を沖縄社会に還元できるような進路を選択したいと考えています。

4.沖縄大学大学院への進学を検討している方へメッセージをお願いします
沖縄大学大学院には社会人の方が多く在籍していますが、私のように学部時代から琉球弧研究支援や卒業論文を通して基礎研究を行い、研究をさらに深化させるために大学院に進学する学生もいます。中には、退職後に大学院で研究をする方もいたりと、本学の大学院生は年齢や経歴、生活環境、進学目的が様々で、大変刺激になります。独力で研究に打ち込むことはもちろん大切ですが、そのような人たちとの議論や雑談を通して、自身の研究だけでは見えてこなかった多角的な視野が得られると思います。それは、研究や将来のことなど、人生における様々な場面で役立つのではないでしょうか。大学院という「特別な時間」を、あなたも体験してみませんか。

修了生

城間かおり【 2020年度修了】

1.大学院進学および本学を選んだ理由を教えてください。
学部生時代から、大学院でさらに学びを深めたいという希望はありましたが、卒業して就職する道を選んだため、その時は叶いませんでした。社会人になり十数年が立ち、現場で感じる疑問を解決する方法を学会発表という形で自分なりに行っていましたが、きちんとエビデンスを作る方法について学びたいと感じるようになりました。
沖縄大学は、社会人にも広く門戸を開いていたため選びました。
2.どのような研究活動に取り組まれたのですか
高齢者医療に関わってきたため、高齢者に特化した栄養指標、入院時のルーチン検査で管理栄養士の介入が必要な方にいち早く介入できる指標がないかについて研究しています。
現場でもった疑問をどうエビデンスとして蓄積することができるのか、沖縄大学で学んだ方法論を後輩たちへシェアしていくことができればと考えています。
4.沖縄大学現代沖縄研究科に進学を考えている人へのメッセージ
沖縄大学現代沖縄研究科には、社会人が多くいらっしゃいます。社会に出て感じた疑問を、どう解決できるのかさまざまな分野で活躍されている方とディスカッションし理解を深めることができます。とはいえ、修士課程2年はあっという間です。自分の研究テーマをしっかりイメージして、学びを深めてください。