私立大学研究ブランディング事業

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2016年度、私立大学を対象とした文部科学省の「私立大学研究ブランディング事業」が始まりました。同事業は、学長のリーダーシップの下、優先課題として全学的な独自色を大きく打ち出す研究に取り組む私立大学・私立短期大学を重点的に支援するというものです。はじめての公募となった2016年度は全国から198校が申請、40校(タイプA社会展開型:17件、タイプB世界展開型:23件)が選定されました。
同事業において、沖縄大学は「沖縄型福祉社会の共創―ユイマールを社会的包摂へ―」の研究テーマでタイプAの社会展開型に応募し、対象校に選定されました。本事業を活用し、沖縄大学憲章が掲げる「地域共創・未来共創の大学へ」の実現に向け、本学の地域研究をさらに推進していきます。

2016年度~2018年度報告

2016年度実績

学校法人番号471002
学校法人名沖縄大学
大学名沖縄大学
事業名沖縄型福祉社会の共創-ユイマールを社会的包摂へ
申請タイプタイプA
支援期間3年
収容定員2060人
参画組織法経学部・人文学部・大学院現代沖縄研究科・地域研究所・地域共創センター
事業概要 沖縄大学は地域研究所と地域共創センターを擁し地域共創を実践してきた。本事業で、①重点研究を「沖縄型福祉社会の共創」として沖縄の子どもの貧困問題に焦点をあてた研究を推進、②地域研究所の研究費を増額、③学内競争的研究費は「福祉社会の共創」を優先、④研究と実践の場として地域共創拠点を整備、⑤那覇市および中小企業家同友会との連携を強化し家庭支援の輪を広げる、⑥研究成果は学生等の実践により社会へ還元する。
①事業内容 全国平均の倍以上となっている、沖縄県の子どもの貧困率の解決に寄与することを目的として、研究支援と実践支援の二つの流れを進めて、相互のPDCAサイクルにより展開していく。
研究支援としては本学の4学科(法経学科、国際コミュニケーション学科、福祉文化学科、こども文化学科)がそれぞれの専門性を発揮出来るよう、テーマをA:雇用と労働、B:教育、C:福祉の3分野として学内へ公募をかける。
実践支援としては、本学近隣に購入したビルを整備し、地域共創拠点として活用していく。
②平成28年度の実施目標及び実施計画【目標】

  • 「沖縄型福祉社会の共創」における重点研究の学内公募と選定を行い、子どもの貧困対策として実施している各事業の評価方法や効果測定方法を検討し、事業の研究指標を定める。
  • 実践研究の拠点となる場所の整備を行い、今後の活用に対応していく体制を整える。
  • 学内外に本事業の周知を徹底するよう、配布物の作成やシンポジウムを開催する。

【実施計画】2016年12月地域研究所重点研究「沖縄型福祉社会の共創」研究班・研究者募集2017年 1月研究班・研究者の採択ブランディング事業パンフレット作成キックオフシンポジウムの開催2017年 3月外部評価委員会

③平成28年度の事業成果
  • 地域研究所重点研究「沖縄型福祉社会の共創」の公募に関して5件の応募がありそのうち4件を採択した。内訳は個人研究が1件、共同研究が3件。各研究の研究成果報告書は別添する。
  • 実践研究の拠点となる場所を沖縄大学アネックス共創館として整備し、3月に地域研究所が引越して運用を開始した。
  • ブランディング事業を周知するパンフレットを作成した。
  • 2017年1月21日にキックオフシンポジウムを開催した。
④平成28年度の自己点検・評価及び外部評価の結果(自己点検・評価)
重点研究「沖縄型福祉社会の共創」について、事業採択から公募までの時間が限られていたが、5件の応募を得ることができたことは評価できる。一方で、今後、関係団体との協働的研究の熟度をあげてより実践的な内容とすることについては課題が残った。地域共創の拠点「共創館アネックス」の整備について、計画通り年度内に完成し、市民協働のためのスペースが確保され、29年度以降の子どもの居場所づくりに目途が立った点は評価できる。今後は市民への広報に務め、より活用度の高い場として提供していきたい。
(外部評価)
2017年3月24日に、沖縄大学アネックス共創館において外部評価会議を開催した。メンバーは学識経験者および行政職員である。まず今後の地域共創活動の拠点となる予定のアネックス共創館を案内し、外部評価員から場の活用について期待を寄せられた。その後、事務局から重点研究「沖縄型福祉社会の共創」について、進捗状況を説明し、活発な質疑をいただいた。その中で、沖縄児童文学の読み聞かせの可能性や子どもの貧困に関する図書の配架、沖縄のキャリア教育が職業教育に留まらず人間教育へと広げていく可能性、貧困家庭の親の労働環境改善に向けた企業の取り組み、子どもの居場所が真に子どもの可能性を拡げる場となる条件といった多角的な議論があり、それぞれに取り組む研究の意義が改めて確認された。課題は次年度以降に持ち越されるものもあるが、外部評価を毎年継続することで、子どもの貧困について効果を期待するとの評価をいただいた。
⑤平成28年度の補助金の使用状況
  • 地域研究所重点研究「沖縄型福祉社会の共創」に関しての研究助成費
  • ブランディング事業周知のためのパンフレット印刷製本費
  • キックオフシンポジウム運営費
  • シンポジウム講師謝金
  • 旅費
  • 交通費
  • 外部評価員交通費
  • 施設整備等に係る改修工事の費用

2017年度実績

学校法人番号471002
学校法人名沖縄大学
大学名沖縄大学
事業名沖縄型福祉社会の共創-ユイマールを社会的包摂へ
申請タイプタイプA
支援期間3年
収容定員2000人
参画組織法経学部・人文学部・大学院現代沖縄研究科・地域研究所・地域共創センター
事業概要 沖縄大学は地域研究所と地域共創センターを擁し地域共創を実践してきた。本事業で、①重点研究を「沖縄型福祉社会の共創」として沖縄の子どもの貧困問題に焦点をあてた研究を推進、②地域研究所の研究費を増額、③学内競争的研究費は「福祉社会の共創」を優先、④研究と実践の場として地域共創拠点を整備、⑤那覇市および中小企業家同友会との連携を強化し家庭支援の輪を広げる、⑥研究成果は学生等の実践により社会へ還元する。
①事業内容 全国平均の倍以上となっている、沖縄県の子どもの貧困率の解決に寄与することを目的として、研究支援と実践支援の二つの流れを進めて、相互のPDCAサイクルにより展開していく。  研究支援としては本学の4学科(法経学科、国際コミュニケーション学科、福祉文化学科、こども文化学科)がそれぞれの専門性を発揮出来るよう、テーマをA:雇用と労働、B:教育、C:福祉の3分野として学内へ公募をかける。  実践支援としては、本学近隣に購入したビルを整備し、地域共創拠点として活用していく。
②平成29年度の実施目標及び実施計画【目標】

  • 提示された指標に基づく実践活動の評価を行い、半期でその見直しを行い、新たな研究指標となるよう改善する

【実施計画】
2017年 4月
地域研究所共同研究班及び重点研究「沖縄型福祉社会の共創」研究班・研究者募集(新規・継続) 学長裁量枠による「沖縄型福祉社会の共創」に係る競争的研究募集(新規) 学習支援・子ども食堂・相談事業の実践者による実践活動(学生と実践者)
2017年10月
実践者からの報告を受け、行政担当者を交えた事業成果指標の課題検討(各研究チーム
2017年12月
見直された指標案の提示(研究チームから研究プロジェクト推進委員会へ報告)
2018年 1月
「沖縄型福祉社会の共創」中間報告シンポジウム
2018年 3月
外部評価委員会

③平成29年度の事業成果研究支援として以下の研究が進められた。それぞれの研究は順次本学紀要への掲載、或いは叢書発刊等で、研究の成果と内容を公表していく。
研究テーマA:雇用と労働(就労支援や職場開拓等)
①「沖縄企業のブランド化による収益性の向上」と「雇用の質改善」と相互関係の検証」※2017年度新規研究
②沖縄の若者をめぐる雇用問題の把握と企業の先進的取り組み事例の調査・研究※2016年度より継続研究
③次世代を担う若者に向けた新たな「キャリア教育」「労働法・労働社会」「医療制度の拡充」の再構築のための検証※2016年度より継続研究
研究テーマB:教育(学校と地域の連携等)
①学力向上を目指す学校と地域の連携に関する一考察 ※2017年度新規研究
②子どもの貧困に対する沖縄児童文学の可能性※2016年度より継続研究
研究テーマC:福祉(子どもの居場所の効果等)
①子どもの居場所等の意義と連携に関する研究※2016年度より継続研究
研究テーマB及びC(2テーマにまたがる研究)
①子どもの貧困対策としての「地域の教育力」とは何か?※2017年度新規研究
実践支援の成果としては大きく以下の活動が行われた。これらは順次HPに状況を報告していく。
①放課後こくば教室:毎週水曜日に地域の子ども約20名を受け入れし、地域住民主体の運営や学校との連携、問題を抱えた子どもへの対応について実際的な学びを得た。
②学生と地域の活動拠点「メカメカ」:市内銘苅(めかる)にある学外拠点を活用して、地域の子育て中の母子を受け入れ、ゆったりとした中で親の話を聞きながら子どもを見守る活動を通して学生が実践的学びを得た。
④平成29年度の自己点検・評価及び外部評価の結果(自己点検・評価)
重点研究については、福祉系の研究がもう少し増えていくとよいが、昨年度と比べ本数が増え(昨年度4研究班、今年度7研究班)より充実した。課題は、研究成果をどのように子どもの貧困問題に寄与させていくかである。研究終了までに具体的な点を明らかにする必要がある。
実践研究は、当初NPOが主体となって始まった活動を本学及び地元自治会が担い手となるように移行が進み、本学の職員体制も整えて軌道に乗ってきた。週一回だけの教室活動では子どものニーズに応えられないこともあり、回数増が課題である。
また当初計画では研究活動に指標を設定し、これを見直しながら改善していく事を掲げたが、研究により指標の設定が明確に定まらないという点が判ってきた。次年度に向けて指標の有効的な活用の検討を進めていく。
(外部評価)
2018年3月16日に、沖縄大学アネックス共創館において外部評価会議を開催した。メンバーは学識経験者および行政職員である。
今年度事業として開始した、実践支援「子ども文庫」に関して評価を得た。これは研究支援「子どもの貧困に対する沖縄児童文学の可能性」との連動した企画であり、地域の方々に廃棄予定や不要になった本や絵本の寄贈を募り、クリーニング等再生して子ども文庫として配架し子どもたちに供するものであり、研究と実践が連携を取っている点が評価された。半面その他の研究と実践は連動性があまり無いため、今後その点を強化した方が良いのではとの指摘も受けた。
また、事業の社会還元に関しても質問があり、研究支援に関しては今後順次紀要への投稿や出版物の発刊等で社会に公表していく予定であり、実践支援に関しては現行の「放課後こくば教室」において子どもたちの問題点を本学教員及び学外の関連機関と連携して解決していく仕組みを作っていくという事を説明し、今後に期待するとの評価を受けた。
さらに、子どもの貧困と親の貧困(就業率)は切っても切り離せないものであるため、今後この問題についての取組みへを期待する意見を受けた。これに関して、今後中小企業家同友会等との連携した就業支援の模索や、公開講座等を活用した啓蒙活動に力を入れていく考えである事を伝えた。
⑤平成28年度の補助金の使用状況
  • 地域研究所重点研究「沖縄型福祉社会の共創」に関しての研究助成費
  • 放課後こくば教室の運営費
  • 公開講座シリーズ「沖縄の子どもの貧困、私たちの課題」運営費
  • 外部評価員交通費 ・施設整備等に係る改修工事の費用

2018年度実績

学校法人番号471002
学校法人名沖縄大学
大学名沖縄大学
事業名沖縄型福祉社会の共創-ユイマールを社会的包摂へ
申請タイプタイプA
支援期間3年
収容定員2000人
参画組織法経学部・人文学部・大学院現代沖縄研究科・地域研究所・地域共創センター
事業概要 沖縄大学は地域研究所と地域共創センターを擁し地域共創を実践してきた。本事業で、①重点研究を「沖縄型福祉社会の共創」として沖縄の子どもの貧困問題に焦点をあてた研究を推進、②地域研究所の研究費を増額、③学内競争的研究費は「福祉社会の共創」を優先、④研究と実践の場として地域共創拠点を整備、⑤那覇市および中小企業家同友会との連携を強化し家庭支援の輪を広げる、⑥研究成果は学生等の実践により社会へ還元する。
①事業内容 全国平均の倍以上となっている、沖縄県の子どもの貧困率の解決に寄与することを目的として、研究支援と実践支援の二つの流れを進めて、相互のPDCAサイクルにより展開していく。  研究支援としては本学の4学科(法経学科、国際コミュニケーション学科、福祉文化学科、こども文化学科)がそれぞれの専門性を発揮出来るよう、テーマをA:雇用と労働、B:教育、C:福祉の3分野として学内へ公募をかける。  実践支援としては、本学近隣に購入したビルを整備し、地域共創拠点として活用していく。
②平成30年度の実施目標及び実施計画【目標】

  • 見直された指標に基づく成果を分析し、本事業「沖縄型福祉社会の共創」の成果をまとめ、地域社会への継続的波及効果を図る。

【実施計画】
2018年 4月
地域研究所共同研究班及び重点研究「沖縄型福祉社会の共創」研究班・研究者募集(新規・継続)
学長裁量枠による「沖縄型福祉社会の共創」に係る競争的研究募集(新規・継続)
2018年10月
学習支援・子ども食堂・相談事業の実践者による実践活動と見直された指標に基づく報告(学生と実践者)
2018年12月
研究成果のまとめ(各研究チーム→合同チーム→研究プロジェクト推進委員会へ報告)
2019年 1月
「沖縄型福祉社会の共創」成果報告シンポジウム
2019年 3月
本事業に係る叢書発刊等による研究成果の公表
外部評価委員会

③平成30年度の事業成果研究支援としては前年度の研究班がすべて継続で以下の研究が進められた。
研究テーマA:雇用と労働(就労支援や職場開拓等)
①「沖縄企業のブランド化による収益性の向上」と「雇用の質改善」と「相互関係の検証」※2017年度より継続研究
②沖縄の若者をめぐる雇用問題の把握と企業の先進的取り組み事例の調査・研究※2016年度より継続研究
③次世代を担う若者に向けた新たな「キャリア教育」「労働法・労働社会」「医療制度の拡充」の再構築のための検証※2016年度より継続研究
研究テーマB:教育(学校と地域の連携等)
①学力向上を目指す学校と地域の連携に関する一考察 ※2017年度継続研究
②子どもの貧困に対する沖縄児童文学の可能性※2016年度より継続研究
研究テーマC:福祉(子どもの居場所の効果等)
①子どもの居場所等の意義と連携に関する研究※2016年度より継続研究
研究テーマB及びC(2テーマにまたがる研究)
①子どもの貧困対策としての「地域の教育力」とは何か?※2017年度より継続研究 実践支援の成果としては大きく以下の活動が行われた。
①放課後こくば教室:これまで毎週水曜日に開催していた同教室だが、30年度より金曜も開催日とし週二回体制で継続して行った。専属のスタッフを就け、地域の子ども約20名~30名を受け入れ、ボランティアの学生や地域住民等も参加し、学習支援や文化事業、スポーツ等を通して子どもたちと関わり、問題を抱えた子どもへの対応について実際的な学びを得た
。 ②ジュニアジャズオーケストラ:上記放課後こくば教室と並行して文化的貧困への取り組みとして開始した事業。週二回、水曜と金曜に音楽団体の琉球フィルハーモニックの協力を得ながら、子どもたちに楽器の指導を行っている。本オーケストラで子ども達が使用する楽器は、すべて寄贈を募り集まった楽器である。
④平成30年度の自己点検・評価及び外部評価の結果(自己点検・評価)
研究支援としては、前年度からの研究班7班がすべて継続して貧困に関する研究に取り組んだ。この研究班活動の中から福祉をテーマとする班が、一般市民向けの公開講座を実施し、研究成果の還元を積極的に行った。また雇用と労働をテーマとする班は、地元新聞社とタイアップし、著作物を刊行するなど、各班ブランディング事業の最終年度としての取組に力を入れた。
また実践支援としては、昨年課題としてあげていた放課後こくば教室の開催回数を増やし、より子どもたちの状況把握を深める事が出来た。さらに新たに文化的貧困への取り組みとして、ジュニアジャズオーケストラを立ち上げた。この取組みでは、関わる子どもの不登校改善の事例もみられた。
(外部評価)
2019年3月26日に、沖縄大学アネックス共創館において外部評価会議を開催した。参加委員は中小企業家同友会幹部及び那覇市職員である。
那覇市職員から、貧困問題は那覇市ひいては沖縄県の抱える大きな問題であり、大学の強みである研究活動をさらに進めて欲しい事と、放課後こくば教室等の実践支援の場との関わりを広げていきたいという意見を頂いた。
中小企業家同友会幹部からは、放課後こくば教室の安定的な運営に関して、関わるコーディネーターが評価を受けた。さらに横のネットワークを築き、活動を地域に広げていく事を期待するとの意見を頂いた。また昨年からの取り組みで寄贈児童書を募って運営している子ども文庫には、多くの企業が所属する同友会に会報で図書を募り連携していく事の提案も頂いた。
⑤平成30年度の補助金の使用状況
  • 地域研究所重点研究「沖縄型福祉社会の共創」に関しての研究助成費
  • 放課後こくば教室の運営費
  • ジュニアジャズ教室の運営費
  • 公開講座シリーズ「沖縄の子どもの貧困、私たちの課題」運営費
  • 外部評価員交通費

成果報告書

学校法人番号471002
学校法人名沖縄大学
大学名沖縄大学
事業名沖縄型福祉社会の共創-ユイマールを社会的包摂へ
申請タイプタイプA
支援期間3年
収容定員2060人
参画組織法経学部・人文学部・大学院現代沖縄研究科・地域研究所・地域共創センター
事業概要 沖縄大学は地域研究所と地域共創センターを擁し地域共創を実践してきた。本事業で、①重点研究を「沖縄型福祉社会の共創」として沖縄の子どもの貧困問題に焦点をあてた研究を推進、②地域研究所の研究費を増額、③学内競争的研究費は「福祉社会の共創」を優先、④研究と実践の場として地域共創拠点を整備、⑤那覇市および中小企業家同友会との連携を強化し家庭支援の輪を広げる、⑥研究成果は学生等の実践により社会へ還元する。
事業目的 ※ユイマールとは沖縄の言葉で「結びつき」や「助け合い」という意味です。
1)研究の背景となった沖縄の社会情勢
沖縄社会は、次のような特質を持つ。三大都市圏以外で最も高い人口増加率(出生率全国1位)という光の陰に全国最下位の県民所得(全国約290万円、沖縄約200万円)と最悪の貧困率、最高の離婚率(2.5%)、最低の大学進学率(学部進学率全国48%、沖縄34%)がある。都市化の進行で地縁血縁いわゆるユイマールも崩れ、食の欧米化と車社会の影響により長寿地域という沖縄神話は崩壊しつつある。
とりわけ沖縄県の子どもの貧困率が29.9%と全国の倍となっており、国、沖縄県とも対策に追われている。背景には低賃金(非正規就業者率44.5%)、長時間労働といった労働環境とそれを創り出した脆弱な経済基盤があるが、隠れた課題としてあまりに貧困層が幅広いため周囲と比べて自分が貧困であることに気づけないというユイマールの弱体化が指摘される。また、低所得の家庭環境の中で先々の希望を持てずに育った子どもたちが意欲的な学習に勤しむ機会を持てず、あるいは有意義な社会体験を積まないまま成長していくことで、社会的損 失を生み出していることに大きな課題がある。
2)研究の目的
本事業においては、本学の文系総合大学という強みを生かし、子どもの貧困の解決策など「沖縄型福祉社会の共創」(ユイマール社会を住民や企業などが積極的な関わりを持つ包摂的な社会へと改編していくこと)をテーマとして全学を挙げた研究を実施する。本研究は、社会的包摂を目的とする沖縄の子どもたちに対する主に地域からの支援を多角的に分析し、子どもたちを支える地域住民、企業、NPOが効果的に連携するための要件を明らかにすることを目的とする。
3)沖縄大学の地域研究の経緯
沖縄大学は米軍占領下の1958年創設された。創設者が、大学名の命名の由来を「沖縄に誇りと愛情を」と述べたように、生まれながらにして地域と共にある大学である。地域共創を大学の理念とし、1988年創設の研究所は、「地域」研究所、2005年創設の大学院研究科名は「現代沖縄」研究科である。さらに、図書館には「琉球弧資料室」を擁し、沖縄戦後史の第一次資料の集積である「新崎盛暉文庫」を整備している。教員の採用の基準の一つを「地域志向の人材」として、沖縄研究を推進できる研究者を数多く持つ。
4)子どもの貧困を研究するに至った経過
本学は那覇市に立地する唯一の文系総合大学で、地元行政、企業に多くの人材を輩出してきた。行政の施策立案に多くの教員が関わる中で、那覇市との強い連携(包括連携協力協定、副市長が本学の理事に就任)が醸成され、市との協働事業で、小中学校への学習ボランティアの派遣(2009年~)、民生委員と学生が共に学ぶ講義「福祉コミュニティー入門」(2015年~)や、子どもの貧困対策として内閣府が打ち出した貧困家庭に対する支援員派遣事業における「寄り添い支援員養成研修」事業(2016年~:那覇市委託事業)を行っている。これらの関わりから、沖縄県および那覇市の子どもの貧困状況が非常に深刻であり、大学の 役割としてこの問題に対応する人材を育成するだけではなく、進行している課題に向き合い、解決策を提示・検証しながらさらに有為な人材を輩出する道を選択することとした。少し遡るが2014年には児童養護施設の卒園生4名を授業料全額免除により受け入れ、その後も門戸を開いている。
5)研究の進め方(事業概要イメージ図を参照)
本研究は、研究支援と実践支援の2つの流れを持ち、相互のPDCAサイクルにより展開される。
①研究支援(研究者と実践者との協働)
2016~2018年度の3年間を通した重点研究を「沖縄型福祉社会の共創」として沖縄の子どもの貧困問題に焦点をあてた問題解決型の実践的研究を推進する。学内の競争的研究費を「福祉社会の共創」を優先することとし、本学の4学科(法経学科、国際コミュニケーション学科、福祉文化学科、こども文化学科)がそれぞれの専門性を発揮できるように、テーマをA:雇用と労働(例として親の就労支援、職場開拓)、B:教育(例として学校と地域の連携、スクールソーシャルワーク)、C:福祉(例として子どもの居場所の効果、ファミリーソーシャルワーク)の3分野とする。加えて地域研究所の研究費を増額し地域研究所の約220名の学内 外の研究員による実践研究にも配慮する。
②実践支援(実践者と学生・協力者との協働)
実践の場として本学近隣に購入したビルや本学施設を活用した地域共創拠点を整備する。そこを子どもの学習の場、子ども食堂に活用できるスペースとして、住民とNPOの協力の下、学生との協働実践の場としてグループワーク、ディスカッション・ディベート、フィールドワーク、プレゼンテーションがすべて行える場を創る(アクティブラーニングフロア)。なお、子ども食堂には沖縄県栄養士会による指導を仰ぐ計画である。講堂や運動場も新規に整備予定あり、室内遊びや外での運動も可能である。また、那覇市および中小企業家同友会との協働により、子どもが貧困状態にある親の就労相談や職場開拓、奨学金の返済といった経済面や 生活の相談を受け止めていく家族支援のネットワークづくりを行う。
事業成果  本学ブランディング事業は『沖縄型福祉社会の共創-ユイマールを社会的包摂へ』という 事業名で、特に沖縄の子どもの貧困問題に焦点をあてた研究支援と実践支援を平行して推 進してきた。
●研究支援
研究支援としては、選定年度となった平成28(2016)年度に、学内外の研究者で子どもの 貧困に関する複数の研究班を立ち上げ、所管部署である地域研究所の研究費を増額して 研究活動を支援した。また、その後の平成29(2017)年度、平成30(2018)年度も続けて、子 どもの貧困問題を扱う研究班を優先的に採択し、予算配分にも配慮をして研究の支援を行っ た。平成28(2016)年度の開始時には4研究班だったのが、平成29(2017)年度、平成30 (2018)年度にはそれぞれ7研究班となり、沖縄における子どもの貧困問題に関しての研究を 深めた。成果としては、研究班の研究を書籍としてまとめた春田吉備彦(2018)『沖縄県産品 の労働法』や、沖縄大学地域研究所紀要『地域研究』への研究班の活動報告や子どもの貧 困問題を扱った著作の掲載等がある(島村聡他(2017)「子どもの居場所等の意義と関係機 関等との連携に関する研究」等)。また大学が所在する那覇市及び隣接の豊見城市からの委 託業務として、ソーシャルワーク研修を2016年から継続して実施している。これは現場で働く ソーシャルワーカーを集めて事例等を共有し、また大学内外で活動する研究者や支援者等 を講師として招き、地域の抱える子どもの貧困問題を扱うソーシャルワーカーを育成している。
●実践支援
ブランディング事業の申請時から、その実践支援の場となる事を視野に入れ、大学の近隣 にある空きビルを購入し、子どもの居場所の拠点となるよう整備を行った。平成29(2017)年 度からはそこで「放課後こくば教室」を開催している。これは、地域社会の中で子どもが安心・ 安全に過ごせる居場所づくりや健やかに成長するための放課後対策の一つとして、近隣小学 校の児童を対象に行っている。学校の宿題や自主学習の時間を設け、学内スタッフや学生、 地域の協力者を招いて昔遊びや伝統おやつ作り、スポーツなどを企画している。当初週一回 の開催だったが、子ども達や地域の要望があり、現在は週二回の開催をしている。また研究支 援で活動している研究班のテーマから派生した、「子ども文庫」を設置しており、放課後こくば 教室に通う子どもたちに利用されている。子ども文庫は家庭等で使用されなくなった児童書 や図書、辞典等の寄贈依頼を広く行い、提供頂いた本等にクリーニングを施し、閲覧できるよ うに配置している。さらに平成30(2018)年度からは、文化的貧困への取り組みとして、ジュニ アジャズ教室を開催している。これは一般社団法人琉球フィルハーモニック、及び沖縄県内 外で活動するミュージシャンにご協力を頂き、子どもたちに楽器演奏の指導を行っている。使 用される楽器は、子ども文庫同様、家庭で使用されなくなった楽器の提供を広く募り運営を 行っている。
また所管の地域研究所は、業務として一般向けの公開講座を開催しているが、ブランディン グ事業以降、研究班からの提供で子どもの貧困に関するテーマを扱った公開講座を平成29 (2017)年度は4回、平成30(2018)年度は3回開催し、参加した市民等から多くの反響を得 ている。※開催テーマ(平成29(2017)年6月開催「タフな支援者になれますか?」、同9月 開催「親の子育て、就業と貧困問題」、平成30(2018)年1月開催「いま子どもたちが求める 学びとは?」、同2月開催「子どもの貧困政策論」、同11月開催「沖縄からブラックバイト・ブ ラック労働問題を問う」、平成31(2019)年1月開催「今なぜスクールソーシャルワークなの か」、同2月開催「子どもの貧困支援はどこに向かうのか」)
今後の事業成果の活用・展開 事業期間の研究支援と実践支援を通して、沖縄大学が子どもの貧困に対して前向 きに取り組んでいることが各界に印象づけられた。それは平成28(2016)年度以降 のマスコミにおける報道や沖縄県との協働的な取り組みや子ども調査受託に現れて いる。今後は、このブランド力を背景にさらなる実践と研究に取り組んでいきた い。以下にその展開を示す。
(1) 子どもの貧困問題を扱う研究班の優先的採択を継続
これまで続けている子どもの貧困に関する研究班の優先的な研究助成を継続して すすめ、子どもの貧困対策事業を巡る各市町村との連携や貧困が原因で沖縄の課題 となっている就労、教育、住まいなどテーマを拡げて研究支援を行いたい。
(2) 沖縄県や県内市町村との関係強化
那覇市や豊見城市と子どもの貧困対策支援員の研修の受託をしてきたが、今後は このノウハウを他市町村や県全体に活かすためにオープン化して研修希望に応えて いくため、県を通じて各市町村に広報していく。
(3) 居場所のネットワークの充実・拡大
大学が運営する放課後こくば子ども教室は周辺の子ども食堂や学習支援に比し て、自治会や民生委員の関わりが安定的で研究者による支援が可能というメリット がある。これまでも本学が地域の数カ所の居場所を集めて情報交換を行ってきた。 また、市内の居場所を支援する那覇市社会福祉協議会との関係もできており、企業 を通じた居場所への食品等の提供も日常化している。今後ともこれらを継続し、相 互の子どもの抱える課題に対応できる体制を整えて行きたい。
(4) 学生の学びの場として科目化
ブランディング事業で実施してきた子ども教室について、これまで関わってきた 学生の学びの場としての継続性を担保するために、令和2(2020)年度から福祉文 化学科のゼミの授業とする。さらに、今後は子ども教室を子どもと関わるボラン ティア養成の科目としての可能性を探ることとする。
(5) ジュニアジャズの発展性
平成30(2018)年度から始まったジュニアジャズオーケストラの取り組みはプロ ミュージシャンの直接指導があるということで注目され、現在は演奏会で披露する こともできるようになった。今後、小学生が中学になってもフェローとして後輩を 応援するような形ができれば、地域の受け皿として発展する可能性があり、当面こ れを継続する予定である。