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学長メッセージ

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学長  山代 寛

沖縄大学には他の大学にないかけがえのない物語があります。
戦前、沖縄は日本の中で唯一大学などの高等教育機関を持たない県でした。戦後はアメリカの施政下、米軍政府情報局のもとに琉球大学が設置されましたが、収容人数に限りがあり、また留学生として県外へ進学する国費留学などの制度はあっても、県外へ進学することはいまよりとても難しかったのです。一方で、戦後の沖縄復興を担うために仕事をしながら勉強もしたいと願う若者が多くいました。 そうした中、1956年に沖縄大学創設者、嘉数昇氏によって、沖縄大学の前身となる私立の沖縄高校が設置され、その2年後の1958年に県内初の私立大学として沖縄短期大学が設置、そして1961年には4年制になり、現在の沖縄大学が設立されました。 これらの3つの私学の創設者である嘉数氏は1902年に農家の家に生まれ、農作業の傍ら、向学の志を秘めていました。しかし、当時は「百姓に学問は要らない」 という風潮が非常に強く、進学の夢を叶えることはできませんでした。嘉数氏は10代前半で社会に出て苦労した経験から、「自分のような苦しい思いを二度 と沖縄の若者に味わわせたくない、さまざまな事情で機会に恵まれず悪戦苦闘している 若者を心から激励したい」という望みがありました。このように、沖縄の若者たち の就学の希望や嘉数氏の学びに対する強い想いから、沖縄に基盤を置き、沖縄を発展させる人材を生み出したいという願いを込め、沖縄大学の設立に至ったという歴史があります。
「教育の機会均等」という理念と「沖縄のために」という想いのもとに嘉数昇氏によって創設された沖縄大ですが、この始原 に込められた願いが形になった出来事があります。
1972年、いわゆる沖縄の日本復帰の際、沖縄大学は大きな困難にぶつかります。米軍の統治下にある際に施行されていた諸制度は、復帰の際、日本における諸制度との適合をもとめられました。琉球大学の場合は、国立大学として整備されていくことになったのですが、沖縄に当時設立されていた私学である沖縄大学と国際大学は、ともに日本の私立大学の設置基準には適合しないと判定され、文部省(当時)の指導の元、二つの私学の統合が進められることになりました。
沖縄大学は、沖縄大学のまま存続するという決断をしました。
私学には、始原の物語の中に、その私学独自のミッションを含んでいることを大事にしたいと考えたからです。
文部省の方針に反することとなった沖縄大学には、苦しい存続闘争が待っていました。
その過程で多くの人々の支援がありました。沖縄県知事も政府に対して「沖大存続要請」を行いました。県民も20万人署名運動を行い、また「沖大存続を求める県民総決起大会」も開催されました。集会の後にはデモ行進も行われています。
一私学の存続に多くの人々が関心を寄せ、支援をしたのはなぜでしょう。
当時、沖縄大学の18名の教員が、新聞紙上で「沖縄大学存続の趣旨」と題する広告をだしています。そこには次のようにあります。
「種々の形で本土への系列化並びに再編成が強引に行われている。一切が強大な力に組み込まれている中で、せめて私立大学だけでも踏みとどまるところが無くてはならない」
私たちの先輩にあたる教員たちは、困難を覚悟し、それを乗り越え自主独立の道を選ぶ決意をしたのです。その姿勢に県民は共感し、やがて沖縄大学支援の輪は「本土」にも広がっていくことになります。
最終的に、この活動は実を結び、文部省の理解を得て、沖縄大学はあらためて大学として認可するという手続きがとられ、沖縄県民の方々に沖縄大学の理念、願いが支持を得られたことで存続が可能になり、このことから、地域に根ざした大学であることをより明確にしようという機運が生まれ今に至っています。
沖縄大学は始原に立ち戻れば、嘉数先生によって産み出され、その歩みの中で厳しい存続闘争を県民の支援を得て生き延びたというかけがえのない物語を有しています。
今、沖縄大学に在籍している私たちは、このことを心に刻み、あらためて感謝したいと思います。物語は今も続いています。ここまで読んでくださったこの文章も歴代学長のメッセージを受け継いだものです。そして、私たちはこの物語を次代にも引き継ぎます。
沖縄大学は小さな大学です。世界の最先端を研究する大学ではありません。沖縄にあり、沖縄のことも学びながら、やがて社会に飛び出していく学生一人一人の成長を支援するための大学です。
創設以来、様々な困難を乗り越え地域に慕われ信頼されることになった沖縄大学は「学生を第一に、教育に立つ」大学として、沖縄大学にしかない物語りをつむぎつづけます。
沖縄大学の理念は「地域共創、未来共創の大学へ」です。今、そしてこれから、この大学の物語をつむぐのは、大学の教職員のみならず、学生のみなさん、卒業生のみなさん、今はまだ入学していないけれど将来ひょっとしたら入学をしてくださるみなさん、そして地域のみなさんも一緒なのです。
学長 山代 寛