2021年3月11日(木)、2020年度 沖縄大学卒業式・学位授与式、修了式を挙行しました。
2021年度は、大学卒業生376名、大学院修了生3名、合計379名が新たな門出を迎えました。また、今年は新型コロナウイルス感染防止の観点より、学科ごとに会場を分けて行い、卒業生・修了生、本学の関係者のみの参列とし、式典の模様は学内会場にはライブ配信しました。
各学科ごとの授与式では教員が作成した卒業おめでとう映像の上映や、学生制作の思い出のビデオの上映、学科独自の表彰などが行われ、恩師や仲間との最後の時間を過ごしていました。
学長告辞
卒業生の皆さん、本日は卒業、おめでとうございます。
昨年の2月以来、日本全土を覆ったコロナ禍の中、卒業生の皆さんは、大学生活最後の一年を送るにあたり、様々な困惑を覚え、不安を抱え、それでも努力を重ね、新たなことにチャレンジし、本日を迎えたのではないでしょうか。
それまでの当たり前が、当たり前ではなくなってしまった、このコロナ禍の日々においては、目の前に問題が起こっても、正しいと思える答えがどこにも見当たらないという事態が日常茶飯になってしまいました。どうしたら感染を抑え込めるのか。はたまた、コロナ禍が収まらない中で、どうやって経済を回していくのか。いずれも、これが正解といいきれるものがないように思えます。
ふと、思いを他のことに巡らしてみました。例えば、沖縄大学は、今から60年ほど前、嘉数昇という一私人が創立した大学です。私はもちろん、その頃のことを直接知りません。でも、まだアメリカの施政下の沖縄で、嘉数さんが本学を創立しようと考えた時、「そんな先の見えない事業はやめたほうがいいよ」とアドバイスをした人もいたのではないでしょうか。嘉数さんは、それでも、「大学を作る」という決断を下したわけです。しかし、嘉数さんに、先々の事が全て見通せていたわけではありません。実際、沖縄の本土復帰に伴い、本学は一度、廃校処分になりかけます。そのとき、大学にいた教職員や学生たち、また、大学の存続運動を支援した人たちがいなければ、本学は今、ここには存在していません。そして、創立を決意した嘉数さんにも、本土復帰の際の大学存続運動を担った人々にも、今、沖縄大学がこのようにあることは、決してわかっていたことではなかったはずです。本学に携わった、その時々の人々が、目の前の問に対して一つひとつ対応していった結果、今、私たちは今日の日を迎えています。そうやって考えると、私たちは、常に答えのわからない問の前に立たされているのではないかと思えてきます。
新型コロナは、否応なしに、私たち皆に、そのような問を投げかけてきました。そのような中、例えば一度定めた施策に固執し、それが決していい結果を生まないということがわかった後でも、なお無理強いをし続けようとした政府の姿勢が問われたりすることがありました。私達がそのような例から学ぶことは、答えのわからない問に対しては、その折々に、新たな選択をし直していくことの重要性だと思います。
答えのわからない問に対して私たちが立ち向かうためには、どんなものでも利用しなければなりません。みなさんは、大学生活の中で、様々なことを学び、また、様々なことや人に出会ったことだと思います。そうした学びや出会いが、いつ、みなさんの問に対して手助けしてくれるかはわかりません。でもきっと、いつか、「ああ、あのときのことが、こんなふうにつながるんだ」と思う日がくるはずです。
本日、卒業の日を迎えた皆さんは、それぞれ、新たな道を選択されていることと思います。ですから今日は始まりの日ともいえます。あらためて、皆さんの卒業をお祝いし、皆さんのこれからの活躍を願い、私からの告辞とさせていただきます。
沖縄大学 学長 盛口 満