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2023.11.20#その他

「ロシア・ウクライナ戦争 これまでとこれから」岩﨑一郎先生(一橋大学経済研究所教授) 経法商学会講演会開催

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11月17日(金)、岩﨑一郎先生(一橋大学経済研究所教授)を経法商学会の講演会にお招きし、「ロシア・ウクライナ戦争 これまでとこれから」のテーマでご講演いただきました。

講演では、2022年2月24日のプーチン大統領の軍事作戦実施表明の演説により始まったロシア・ウクライナ戦争のこれまでを振り返ることから始まりました。2023年11月現在のロシアおよびウクライナの軍人死傷者が示され、ロシア、ウクライナ共に多数の人的被害があり、どこが優勢でどこが劣勢なのかがわからない状況となっており、長期戦の様相であるとの解説がなされました。(2023年11月現在 ロシア:軍人死者12万人、軍人負傷者18万人、ウクライナ:軍人死者7万人、軍人負傷者12万人)

そして、米・欧・日を中心とする国際社会のロシアへの経済制裁(SWIFTからの締め出し、ロシア中央銀行の資産凍結 ②輸出規制 ③最恵国待遇の取り消し撤回 ④輸入規制 ⑤プーチンに近いロシア富豪の資産凍結)や外国企業の3割超がロシア撤退を行った状況について説明があり、これら経済制裁の効果について,その即時性をやや疑問視する評価が下されました。

一方で、ロシアが化石燃料や穀物の輸出先を変えて外貨を獲得していることロシア中央銀行の金融政策によりルーブルの価値が下がっていないこと、戦前は欧・韓・日メーカーの優勢が著しかったロシアの自動車市場を中国が侵食していること、第三国経由で先進国産の半導体が中国・台湾製のドローンと共に大量にロシアへ入っていること、政府の軍産複合体への巨額発注により、制裁下であってもロシアの兵器生産が拡大している状況について説明がありました。

2022年のロシアの実質経済成長率は予想に反してマイナス2.1%(ウクライナはマイナス30%以上)にとどまり,さらに2023年には経済成長率がプラスに転じ,かつ失業者も減っており、厳しい制裁下においても、ロシアの経済活動が徐々に回復していることが示されました。

ロシア経済における「死荷重」の問題、オルガルヒや縁故資本主義の問題、政治家がソブリンファンドに群がる構造の問題についても触れられました。

最後に、この戦争がどのような形で終わるにせよ、その後も続く制裁や国際社会からの締め出し、多国籍企業の進出および外国直接投資の低迷(ロシア・パッシング)、戦後補償の財政負担、人口危機の加速、ドイツやアメリカ等への頭脳流出の長期化、科学技術交流の低迷など、戦後のロシアには暗い未来が待っているとの視点が示されました。