「発行されなかった卒業証書展」オンライン講演を開催しました
沖縄大学では、ウクライナ避難民有志による企画展「発行されなかった卒業証書展」の開催にあわせ、オンライン講演を実施しました。
本講演は、展示の背景にある問題意識や、戦禍のもとで学びや日常を奪われた若者たちの現状について理解を深めることを目的として行われました。
講演には、同展示の企画に携わり、日本各地で活動を続けてきたマリア・ボンダレンコ氏(ウクライナ出身)が登壇しました。ボンダレンコ氏は、ウクライナ東部ハルキウ出身で、ロシアによる軍事侵攻後、日本への避難を経験しながら、ウクライナの現状を日本に伝える活動に取り組んできました。
当日は、「発行されなかった卒業証書展」がどのような思いから始まったのかについて説明がありました。本展示は、戦争によって命を奪われ、卒業証書を受け取ることができなかった学生一人ひとりの肖像と、趣味や夢、将来への希望を「卒業証書」という形で示すことで、若者たちの存在と人生に光を当てる企画です。単なる数字ではなく、「顔のある一人の人生」として伝えることの重要性が語られました。

また講演では、戦争下におけるウクライナの若者や学生の生活についても具体的な報告がありました。空襲警報や停電が日常化する中での学習環境、対面とオンラインを併用した教育の実情、国外に避難した若者が直面している課題などが紹介され、戦争が教育や将来設計に与える影響の大きさが共有されました。
質疑応答では、学生や参加者から、戦争を経験する中での価値観の変化や、日本での避難生活で感じたことなどについて質問が寄せられました。ボンダレンコ氏は、自身の経験をもとに、一つひとつ丁寧に応答し、遠い国の出来事としてではなく、世界がつながる中で考えるべき課題として戦争を捉えてほしいと呼びかけました。
本講演および展示は、戦争によって失われた学びや日常に思いを寄せるとともに、学生が国際社会の出来事を遠いものとしてではなく、自分自身の問題として捉え直す契機となりました。



