【開催報告】第620回沖縄大学土曜教養講座「沖縄微生物ライブラリーとは?亜熱帯の生き物に潜む共生微生物の可能性」を開催しました
2026年8月29日(土)、沖縄大学において、第620回沖縄大学土曜教養講座「沖縄微生物ライブラリーとは?亜熱帯の生き物に潜む共生微生物の可能性―微生物共生がもたらす島の生物資源を未来へ残そう―」を開催しました。
今回は、琉球大学・(公財)発酵研究所との連携講座として、沖縄の豊かな自然の中に広がる微生物の世界に目を向け、微生物を「集める」「保存する」「活かす」という視点から、沖縄の生物多様性や生物資源の可能性について考えました。
開会にあたり、盛口満学長から挨拶がありました。1978年から続く土曜教養講座は、本学が地域との関わりを重視してきた実践の一つであることに触れ、今回の講座についても、沖縄という地域を知り、自然とどのように関わっていくのかを考えるという点で、これまでの土曜教養講座につながるテーマであることが紹介されました。
続いて、琉球大学熱帯生物圏研究センターの新里尚也准教授から、「沖縄微生物ライブラリー(OML)構築と活用」と題して講演いただきました。
新里氏からは、沖縄を中心とする南西諸島から微生物を収集・保存し、研究や産業で活用できる資源として蓄積してきた「沖縄微生物ライブラリー」について紹介がありました。現在では4,000株を超える微生物が収集されており、農業、医療、環境浄化など、さまざまな分野での活用に向けた研究が進められています。
また、サンゴや植物など、私たちの身近な生き物も多様な微生物との関係の中で生きていることが示され、目に見えない微生物の世界が沖縄の自然や暮らしを支えていることについてお話しいただきました。
二つ目の講演では、千葉大学真菌医学研究センターの伴さやか講師から、「微生物を集め、守り、活かす:バイオリソースが支える未来」と題してお話しいただきました。
身近なカビや酵母などの菌類を例に、微生物を収集し、適切に保存して次世代へ引き継いでいく「バイオリソース」の役割について解説いただきました。
微生物そのものだけでなく、「いつ、どこで、誰が採取したのか」といった記録を含めて残すことの重要性や、長期間にわたり菌株を維持していくためには、設備や技術、人材を継続して確保していく必要があることも紹介されました。
三つ目の講演では、沖縄大学の盛口満学長・人文学部こども文化学科教授が、「琉球列島の菌類多様性:昆虫と冬虫夏草」と題して講演しました。
昆虫に寄生する冬虫夏草を中心に、琉球列島で見られる多様な菌類を写真や実際の調査事例とともに紹介しました。身近な場所や観光地であっても、これまで知られていなかった菌類が見つかることがあり、「足元の自然」にも、まだ解明されていない多様な世界が広がっていることが示されました。
後半は、琉球大学の伊藤通浩氏、松浦優氏の進行のもと、来場者からの質問も交えながら、沖縄の微生物をどのように調べ、保存し、未来へつないでいくのかについて意見交換が行われました。
微生物の保存には、停電や災害への備え、保存場所の分散、長期間保存した菌株が再び利用できる状態にあるかの確認などが必要であり、設備だけでなく継続的な人の手と資金が欠かせないことが話題となりました。
また、環境そのものが変化すれば、そこに生息する微生物も失われる可能性があることから、微生物を保存することと、その微生物が生きる自然環境を守ることの双方について考える機会となりました。
今回の講座を通して、普段は目にすることのできない微生物が、沖縄の豊かな生物多様性を支える重要な存在であること、そして、その多様性を知り、記録し、未来へつないでいくことの大切さを学ぶ機会となりました。
ご登壇いただいた皆様、ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。




